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SOP研修報告【小野寺・門脇・作山・富樫・森】青森

  • 研修関連
  • 2021.07.24|富樫遼太

【研修場所】
青森県(弘前市・青森市・十和田市)

【研修期間】
2021年7月22日~24日

【研修テーマ】
1.モノづくりにこだわりを持ち、私たちにしかできない社会貢献をしよう。
→雪国ならではのディテール、構成等の特殊性を学習し、相互で共有する。
2.「Spirit of place」を深化。もっともっとローカリティを突き詰めよう。
→雪国建築や庁舎建築等、進行中のPJの類似施設を見学し、設計・監理にフィードバックできる知識を備える。

今回の研修では、コロナ感染者の少ない青森県の建築や自然に触れ、若手3名と新入社員2名のコミュニケーション向上、知識向上、進行中PJへのフィードバックを目的としました。本記事では「Spirit of place」の深化、地域と建築の関係という視点から、いくつかの建築をピックアップして報告したいと思います。青森マップ-04

【1日目 弘前市】

  • 弘前れんが倉庫美術館
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弘前市は弘前城の城下町と岩木山信仰をベースとした都市構造を成しています。そんな街の中を歩いていて遠くに見えた黄金色の屋根は、「街並みに馴染むこと」や「建築の力強さ」を表現しているのではなく、設計者の田根剛さんのいう「場所の記憶」を体現した屋根であることが瞬時に感じられました。

このレンガ倉庫の大屋根は、建設当時の明治時代から長い間町の風景であったようです。その黄金色への改修は、記憶の「冷凍保存」ではなく、記憶の「上書き保存」と捉えられます。その効果は、弘前の都市文脈の中で薄れていた明治期をリバイバルさせたこと、そして江戸、明治、時代を超えた山岳信仰が重層した現代都市:弘前として都市文脈を塗り替えてしまったのではないか(良い意味)と妄想しておりました。

本当の意味で「町のシンボル」と呼べるような建築に出会えた経験でした。

  • 前川國男建築群(弘前市役所・弘前市民会館・弘前市立博物館)
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一人の建築家の作品が集中している場所は全国的にも珍しく、これもまた弘前の都市文脈のひとつです。なぜ安全性や効率性を重視される公共建築が築50年以上経過しても弘前には残っているのか、それは市民団体の保存活動によるものです。これらの建築群は日常的な生活や活動を行う市民の居場所でした。それ故、現代においても市民の共通の記憶を有した場所であること、そこに建築的価値が加わり保存活動が展開したそうです。

建築学の知識が無い人にとってモダニズム建築の価値は見出されにくい中、完全任意の市民団体によって保存活動がされるとは、市民に愛された、なんて幸せな建築なのだろうと感動しました。

【2日目 青森市】

  • 青森県立美術館
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この場所の印象は、地域との関係の中にある場所ではなく、ある人間によってトップダウン的に創造された新しい村(良い意味)といったものでした。それは隣接する三内丸山遺跡の集落構造とも重なります。

望遠からの建築の外観はどこからか飛んできたモノリスのようですが、近づくと人間の巨大な力によってつくられた建築、土木、ランドスケープであることがわかり、感覚が刺激されます。その状態から我々は自由に歩きまわり、シークエンシャルな空間体験を提供されます。土木からロッカーの鍵に至るまでデザインが施されており、設計者のとてつもない熱量を感じる一方で、設計者の意図を超えた巨大な構造物によって自分が「動かされている」ような経験でした。一周を終えるあたりで、申し訳程度に幹線道路の下に三内丸山遺跡への細い動線が確保されていて、別の村へ誘われているようでした。

ボトムアップによる建築づくりやまちづくりとは別に、このような理想郷をつくりたいという欲望は、設計者誰しも心の奥底に存在するのではないかと感じました。その欲望を、決して明るくはない時代に実現させたという意味で、この研修の中で最も印象的な建築でした。

【3日目 十和田市】

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3日目は十和田市内の徒歩圏に点在する建築群を回りました。十和田市現代美術館、十和田市図書館、市民交流プラザ トワーレといった建築は、個々の建築の力強さを放ちながら、街全体の建築デザインへの意識の高さを示していました。近くには、藤本壮介さん設計の地域交流センターも着工しており、建築の街としてこれからもさらに盛り上がりを見せていくのではないかと感じました。

この他にも数多くの建築を見て回ることができました。何よりもよかったことは、先輩方の知識から得られる情報がたくさんあったこと、一緒に働く先輩や同期の知らない一面を知ることができたことです。この経験を糧に、日々の仕事に取り組んでいきたいと思います。このような機会を設けてくださった先輩方、会社の皆様に感謝いたします。

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