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SOP研修【三浦】北陸

  • 研修関連
  • 2025.09.29|三浦高史

富山・石川・福井で4人の著名建築家による作品を見てきました。
内藤廣・谷口吉生・SANAA・仙田満
どの建築家も、いつかはこういう建築を作ってみたい、真似してみたいと思わせる唯一無二の建築をつくる魅力があります。
こういう人たちの建築を見ることで何かしらを得ることができればと思います。

私の研修テーマはシンプルに「良い建築を見る」ことです。
建築を見るにもいろんな見方があると思いますが私は
・利用者として、設計をする人の目線で、運営の目線、施工の目線・・・
・経験によって見る場所も変わってくる
・なぜ良いのか、どうやってそれを実現しているのかを理解し吸収する
・批判的目線で気になるところを見つけ、自分だったらどうするかを考える
・良い建築を見ることで自分の設計を見直す(どのくらいできているか?できていないか?)
・自分の建築ストック、引き出しを増やす
などの視点で見ています。

富山県美術館

運河の末端にある広場に向かう軸線とそれに沿った楕円からこの建物の平面形状が決まっているとのことです。
ガラスファサードは立山連峰の眺望に対しスパっと切断された面とすることで大きな視点での周辺との関係、風景とのつながりを重視しいることが特徴です。
こういう大きなスケールで建築の形を決めるという考えはなかなか出てこないので、勉強になります。

立山連峰は見えなかったがその方向に自然と意識が向くというのは体感できました。

ホワイエの天井はアルミのスパンドレル。
富山の豊富な水で発展したアルミ産業 三協立山アルミの本社工場があるということでこの素材が使われています。

手摺にもアルミの鋳物が使われており、手仕事感が感じられます。

金沢建築館

すだれ状のアルミルーバーが繊細で美しいのですが、下地もきれいでビスやボルトの頭が見えないのがすごいです。
どうつくったのか、どう納まったいるのかを見せない、感じさせないようにする究極のディテールだと思います。

石川県立図書館

円形の強い図式ですが、それゆえの美しさがありました。
立体的に本棚と居場所、動線が組み合わされて有機的な環境が作られていて、みんな思い思いに過ごしている様子が見える楽しい空間となっています。
建築として素晴らしいのはもちろん、こんな場所が近くにあったら通いたい、一日中いたいと利用者目線でも感じました。

金沢21世紀美術館

約10年ぶり2度目の訪問ですが、この建築が今回の研修で見た中で一番でした。
普通の建物なら中の人と外の人という関係が生まれますが、ここはガラスの中も外も公園的でそこにたまたまガラスがあるだけという感じに見える、つまり中にいる人と外にいる人の状況が等価のような不思議な空間になっており、まさに現象・状況をつくっている建築だと思います。
建築は背景、人の活動が主役、というようなことを良く言いますが、まさに人のアクティビティが立面になっています。

前に行ったときはあまり気にしてなかったのですが、天井・壁・床に外の景色や人を映りこんで豊かな光に満ちています。
天気も良くて外の光が強いからより感じやすかったのかもしれませんが、それによって建築の状態が常に変わっていく状態を感じました。

要素をそぎ落とすことによってそれが協調され、光の変化だけでこれほど表情のある空間がつくれるのがすごいです。

鈴木大拙館

プラン、動線がとにかくかっこよく、空間体験によって心が洗われていくのを感じる建築です。

洗練された素材とディテール、必要なものだけがあるべきかたちであるという建築の境地で、ラインが完璧にそろえられたディテールなど、施工誤差という概念がないのだろうか。。。

植栽の足元を隠すことによって自然との境界を調停しています。
Pコンの無いコンクリート壁はどうやってつくったのでしょう・・・

福井県年縞博物館

RCと鉄骨と木造のハイブリッドで、適材適所で構造を組み合わせる内藤さんの神髄が詰め込まれた建築のような印象で、ずっと行ってみたいと思っていた建築の一つです。

建築のプロポーションと展示がすばらしかったです。

どれも素晴らしい建築でしたが、風景とのつながりという大きな視点での建築のあり方、見えないディテールとは何か、空間の密度感、景とアクティビティを映しこみ状況で建築をつくる、完璧な動線とプラン、コンポジション、などの切り口を学ぶことができました。

自分のこれからの仕事に生かしていきたいと思います。