プロジェクト

CREVAおおくま(大熊町産業交流施設)

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創造的復興の中心となる大熊町産業交流施設

大熊町産業交流施設(愛称:CREVAおおくま)は,大野駅西地区の復興を先導するため,原発事故によって失われた産業の復興とオフィス需要の受け皿とし,新たな産業を生み出すことを目的としたプロジェクトである。町民や来訪者の方々にも開かれた施設とすることで,産業と生活が交わるきっかけを生み,町で働く人や暮らす人が自然と集う空間となることを目指した。

計画のポイント① 周辺機能と連携し駅西地区全体の賑わいをつくる

震災前,駅西地区は商店街や町役場・住居が立ち並ぶ町の中心部であった。町の玄関口となる駅前の復興計画として,産業交流施設・商業施設・広場のほか,社会教育複合施設や県立病院が整備予定である。産業交流施設は,今後整備される近隣施設からアクセスしやすく,エリア一体で利用できるような配置計画とした。

1階南側にはピロティ状の縁側テラスを建物の間口いっぱいに計画し,人々が交流できるスペースを設けた。また縁側テラスと内部のCREVA HALLとの間は,木製の大型引戸で,施設内外が連続した利用が可能となっている。歩行者専用道路を設け,CREVA HALL・縁側テラス・広場まで拡張して一体的な利用が可能である。

計画のポイント② 豊かな共用スペースで多様な交流を生む

建物の内外に誰でも利用可能な豊かな共用スペースを各階に設けている。貸事務所や展示機能などをコの字型に配置し,吹抜や階段など主動線を含めて利用者間の交流が育まれるスペースを中央に設けた。吹抜を介して互いが見える立体的な施設の中心である。

計画のポイント③ 柔軟なワークプレイスで多様な働き方を実現する

入居者は各階に設けた共用スペースを自由に利用し,仕事やその日の気分に合わせて適した場所を選んで働くことが可能である。

2階と3階専有部から直接出入りできるバルコニーは,入居者や町民が気楽に立ち止まりやすい交流の場となり,さらに入居者が外部へ向けた発信の場,町の自然や賑わいを感じながらリラックスする場としている。

計画のポイント④ 人々が集まる場に温もりを感じる木材を積極活用

人々が集まる空間に積極的に木材を活用した。吹抜の鉄骨梁を覆う集成材が耐火被覆の役割を果たす耐火木工梁を採用し,エントランスホールや縁側テラスと一体で多目的に利用できる木質大空間を実現している。内部のV字斜柱には木質ハイブリッド柱を採用し,長期荷重は足元のダンパー横に設置したすべり板で負担しつつ,地震力は鋼材ダンパーでエネルギー吸収を行う。さら最上階は格子状の鉄骨梁と斜格子に組んだ集成材木梁の2層構造で,木梁が上部の鉄骨梁を補完し,たわみを抑制する。以上の構造体や被覆材には,福島県産のカラマツを使用した。

計画のポイント⑤ 町の自然資源を有効に活用しゼロカーボンを先導

竣工後の運営を考慮した包括的に環境負荷低減に取り組むシステムとし,建築物省エネルギー性能表示(通称BELS)においてNearlyZEBの認証を取得した。バルコニーは直達日射量の削減に大きく貢献している。また中間期の卓越風を共用スペースの吹抜を利用して自然換気が可能な計画とした。

共用スペースの空調に地中熱を熱源とした躯体蓄熱放射空調(TABS)を導入し,ファン付床吹出口と併用することで居住域空間を無駄なく空調可能とした。

大熊町は,原発事故を経験した町だからこそ,地域の再生可能エネルギーを活用した持続可能なまちづくりに取り組むことを決意し,町における2050年までのゼロカーボンへの挑戦を宣言している。これからの大熊町の創造的な復興・再生とゼロカーボンを先導することが期待される。

岩根敦+本間亜門(関・空間設計)+瀬尾剛史+南野友子+奥浩(清水建設)

施設概要

場所
福島県双葉郡大熊町
用途
事務所・展示場
竣工年月
2024年12月
延べ面積
10,308.69㎡
構造
鉄骨造+木鉄ハイブリッド架構(屋根部)
階数
地上3階

メディア掲載

  • 新建築2025年6月号

受賞歴